クリスマスカップ奮戦記
千葉喜英
 スタートから間もないウェザーマーク手前です。風上側レフリー艇より、ライン上を少し下がった所からスタートしたビーナスJ24はポートタックでウェザーマークに近づいていました。かなり強いブローが吹きます。ブローチングを止めるのがやっと、その時、スタボー艇のカスミが、まっすぐ衝突コースでこちらに向かって来ました。艇長田中さんの目は、にこりともせずこちらを凝視しています。お情けは期待できそうにありませン。タック。カスミのお尻をかわすやいなや、またタック。ベア、ベア、ベア何とかウェーザーマークを回りました。そこで、ハッと気がつきます。今日のクルーは、光木君と、昨日のクリスマスパーティーお料理コンサルタント大西さん。彼はヨットは初めてでした。強風下の帆走なので、腕力はありそうな彼にジブシートを持ってもらい、言うとおりに、ひっぱたり、緩めたりしてください、と教えてからまだ30分もたっていませんでした。
 そもそも、今日はクリスマスカップ、のんびりお遊び気分で、みんなで楽しみましょうと言われていたのです。だから、光木と二人で、ダブルハンドボーナスと女の子ボーナスをいただいて、ま、上位入賞できればいいな、と参加でした。出艇少し前になって、清水さんが、昨日のお料理コンサルタントの大西さん、ヨット乗ったことないので、乗せてあげてくれませんか。断る理由もないので、了解しました。いつものケビンは昔からの親分、春日井さんが新シーファラーで出場なのでそっちに乗っています。
 まず、いつもはケビンが用意してくれるフッティングから用意せねばいけません。ヨットでよく使う言葉が通じないのと、こちらの老人ぼけ、昨夜のアル中ハイマーも加わって、そこのあれそれちょっと引っ張って、になりますから、スタート時間に間に合うかなと不安になりました。
 レース海面、まわりに船が込み合ってきました。なにしろ今回は、お祭りだと盛り上がって、クレイラ榊さん、ここにはフールズの吉岡さんも同乗です。前述のシーファーラー、田口さんもワンダラーで参加、さらに、南西ネットアールからは、風小町で松崎さん参加です。上マークのレフリー艇あたりはずいぶん混んできました。いけねー、船外機止めなければ、引き上げねばいけません。光木君、舵もって。うつむいて船外機を引き上げている間、回りの船が気が気ではありませんでした。
 スタートライン上、もう時刻のはず、時計を見ながら舵を持っています。厚着のため、時計が見えません。10秒早かったかな、ライン上を下へ、そこでスタート、後ろから来た、カスミとAZUREが、上側を登って行きました。
 ショートコースだし、先行艇について行きさえすれば、成績はでるだろうとついて行きます。
 風小町だけがスピンアップ、かなりの気まぐれな風、吹いたり止んだり、前から来たり、後ろから来たり、さすが風小町もスピンを下ろしたようです。今回はお祭り、お祭りと言いながら、皆様ずいぶん気合いが入っていました。実は、11月レースで既にビーナスチームの年間優勝は決まっていたので、どうも、狙い撃ちにあっていたような気もします。俺が出ていたら、千葉さんにはそんな目にはあわさなかった、と松崎さん、外洋レースのベテランと組んでいます。オアシスもファーストホーム、優勝を狙って、プロを3人ものせていました。
 ビーナスJの前方になにやら、でかい漂流物、ビニールハウスでも飛んで来たのかと思いきや、風小町のスピンでした。下ろしたスピンの固定が悪かったのでしょうか、海上を漂っています。風小町が引き返して、収容していました。何かのワールドカップで、ゴール間際に使用していないセールを次々と海に放り込んだ艇長がいると本で読んだ事を思い出していました。いくらなんでも、五カ所草レースでそこまではしないだろう、と変に納得。
 さて結果、狙い通りオアシスがファーストホームでした。マーク回航のたびにオアシスとの時間差を計っていたビーナス、計算通り修正一位。2位は初出場、春日井さん新シーファーラーとなりました。
 クリスマスカップありがとうございます。十分に楽しませていただきました。